クラッチオーバーホールと車検


作業に際して

DIYではありませんが、クラッチオーバーホール(以下、クラッチOH)と4回目の車検を行ったので、実例ということで記しておこうと思います。
4回目の車検というと新規登録から9年であり、10万キロ前後の走行となる方が多いのではないかと思います。
私の場合は約11万キロでしたので、そろそろクラッチOHをやっておこうと思い、その他の関連作業を含めて依頼してみました。

さて、車検に限らず整備工場へ修理を依頼した際は、当然ながら部品代以外に工賃が発生します。
この工賃は作業ごとに指数が決まっており(クラッチOH=7.3Hなど)、これに1時間当たりの基本工賃(だいたい10,000円前後です)を乗じることによって算出されます。
クラッチOHの例ですと、10,000円/H×7.3H=73,000円ということになり、どうやってもその金額が掛かってしまいます。
そこで、せっかくクラッチOHをするのだからそれに関連する作業を同時に行って、工賃を節約しよう、と計画したわけです。

どの作業がどの作業と関連(重複)するかというのは、実際の作業工程を考えればわかることですが、よく例として挙げられるのが「タイミングベルト交換+ウォーターポンプ交換」です。
これらを個別に行うと2倍の(2回分の)工賃が発生してしまいますが、そもそもウォーターポンプを交換しようと思ったらタイミングベルトも外さざるを得ないわけですから、同時にやればウォーターポンプ交換分の工賃しか掛からないというわけです。
そんなわけで私は、クラッチOHの際にはサブフレームを降ろさなければならないことから、同時にエンジンマウント交換とロアアームAssy交換を依頼することにしました。

作業メニュー

一般的な車検整備に加えて依頼した作業は、次の通りです。

クラッチに関しては、通常のカバー、ディスク、レリーズベアリングの定番セットに加えて、レリーズフォークとレリーズピボット(支点となるボルトのこと)を交換します。
これらの部品は交換が必須とされているわけではありませんが、クラッチを切る度に力が掛かるところでもあり、よくグリス切れで異音が発生するところでもあります。
不具合が発生しているわけではありませんが、さほど高価な部品でもないため、念のために交換することにしました。
また、K20Aエンジンにはフライホイールに圧入するパイロットベアリングの代わりにブッシュが組み込まれておりますので、これも交換です。
フライホイールについてはFD2シビックタイプR用純正品に交換してみました(別途アップします)。

エンジンマウントはせっかくですので、全てのマウントを交換します。
数が多いのと、一部で液体封入式マウントが使用されていることもあって、けっこうな金額となってしまいますが…。

ロアアームについてはブッシュだけの交換で済ませたかったのですが、ブッシュの打ち替えが難しいです、と泣きつかれたためアームAssyで交換し、古いアームはオークションに出品することにしました。

スタビライザーブッシュはたいしたことのない部品なのですが、CL7の構造上、交換は容易ではありません。ただしサブフレームが降りた状態だと非常に簡単なので、これも同時に行います。

ラジエータホースについては、もっとも劣化するアッパーホースでさえまだ大丈夫そうだったのですが、予防的な意味も含めてロアホース、そしてサーモスタット、付随してLLCも交換です。

車検整備の基本となるブレーキ関係ですが、前回の車検でマスターシリンダー、前後キャリパーのOHを済ませておりますので、この度はフルード交換のみとしています。

作業的にかなりのボリュームとなるので、ディーラーの定休日を含めて1週間預けることにして、作業をお願いしました。
途中で見学させてもらいましたので、一部写真つきで紹介したいと思います。

見学にいくと、すでにサブフレーム、ミッションが降りた状態でした。
フライホイールもすでに組みつけられており、怪しい輝きを放っています。
レリーズベアリング、レリーズフォークも組みつけられていました。
ここはクラッチディスクの摩耗粉でかなり汚れていたはず。
取り外された部品一式。
クラッチカバーはそれほど傷んだ様子はなく…。
クラッチディスクもまだまだ使えそうな状態です。 写真のスプリングはダンパースプリングといって、クラッチを繋いだときの衝撃を吸収する役目があります。
ハードに使用するとヘタってガタが出たり、場合によっては折損する場合もありますが、おとなしい運転のせいか(笑)問題はなさそうでした。
ブッシュはメインシャフトの振れを抑える役目があります。
FR車のようにメインシャフトが長いとパイロットベアリングが必要になりますが、FF車の場合は短いために振れも少なく、ブッシュで大丈夫なようです。
もっとも以前のホンダ車にはパイロットベアリングがありましたが。
こちらも劣化した様子はありませんでした。
純正フライホイールですが、こちらは怪しい輝きがありません(笑)。
クラッチディスクとの当り面にもクラックなどはなく、再使用しても全く問題はなかったようです。
ただ、私のCL7は冷間時の発進のときに「クゥ」と鳴くような音を発することがあり、そこは気になる点でした(この度のOHによって解消されました)。
メカニック氏の話によると、クラッチ周りは総じて状態はよく、まだまだ大丈夫でしたよ、とのことでした。
このCL7では一度しかサーキット走行をしなかったのもありますが、大事に丁寧に乗っていたのがよかったのかな、とちょっと嬉しく思いました。
ダンプの運転手のなかには100万キロまでOHしない強者もいますので、それにはかないませんが…。
ただし、このレリーズベアリングだけはヘタリというか、回してみると多少ゴリゴリした感触がありました。
クラッチOHというとディスクの摩耗による滑りの発生によって行うことが多いですが、このベアリングの劣化による異音の発生によって行うことも多いです。
こちらは新品のクラッチディスク。
上の写真と見比べてみると残量がよくおわかりかと思います。
クラッチディスクは、フェーシング(摩擦材)が摩耗してリベットが突出してきたら、それ以上使用できません。
これがサブフレームです。
エンジン、ミッションはこのサブフレームに下から支えられるような形になります。
他にもステアリングギアボックス、ロアアーム、スタビライザーもこのサブフレームに取り付けされます。
この状態ですからロアアーム、エンジンマウント、スタビライザーブッシュの交換は容易であり、工賃も最小限しか発生しないわけです。
なお、このサブフレームとボディを結合する部分に挟むのが、流行りのリジカラということになります。

作業後の感想

クラッチに関しては、OHすると踏力が非常に少なく(軽く)なります。
これはクラッチカバーのダイアフラムスプリングの特性によるもので、加えて摺動部分の洗浄と給脂も影響があります。
軽くなったのは楽になったとも言えるのですが、あまりにもフィーリングが変化したため最初は少し戸惑ってしまいがちです。
今回はフライホイールの影響もありますが…。

そしてエンジンマウントの交換は、予想以上に効果的でした。
多少の亀裂はあるものの切れたようなマウントはなかったと思いますが、アイドリング時、走行時ともに振動が劇的に少なくなりました。
毎日にように乗っているとなかなか劣化に気づきにくいものですが、一気に新品になるとその違いは歴然で、車がワンランク上質になったような感覚を受けます。
とは言えエンジンマウント単体の交換となるとかなりの工賃となりますので、クラッチOH時の同時交換がお勧めです。

反面、予想以上に効果が感じられなかったのが、ロアアームAssyとスタビライザーブッシュの交換でした。
当初、タイヤ空気圧がかなり高めになっていたため効果以前の問題でわかりにくかったのもありますが…。
空気圧をいつもの値に再調整して高速道路を走行してみると、多少違うかな?という程度です。
ステアリングを拳一つ分だけ切るような、緩やかなレーンチェンジのときなどが一番わかりやすいかもしれません。
大げさに書けば、ゆっくり切ってもグラっとロールしていたのが、しっとりロールするようになった、といったところでしょうか。
ただ、残念ながらその違いは劇的ではなく、正直言って先送りにしてもよかったかなあ、と思ってしまいました。

冷却関係については、元々不具合があったわけではないため、本当に予防的な交換ということになります。
サーモスタットの動作不良で暖機が長くなったり水温が上昇したり、というトラブルを予防する、という意味合いの作業になりました。

以上がクラッチOHと4回目の車検のあらましですが、クラッチOHのタイミングや車検メニューは走行距離や使用状況によって当然変わってくると思います。
ですか工賃には「まとめてやるとオトク」という法則(?)がありますので、長く乗られる予定があるならばご自分でプランを立てるか、信頼のおけるメカニックによく相談されることをお勧めします。
さしあたり、この度の私の経験から、クラッチOHの際にはエンジンマウントも同時交換、をお勧めしたいと思います。